研究概要 |
有機化合物の示す二光子吸収を利用した多層光記録には、ポストブルーレイ次世代大容量光記録の候補として期待がもたれている。二光子多層光記録を実現するためには、実際に記録メディアとしての利用が想定される、スピンコート膜のような固相薄膜状態で、二光子吸収断面積(二光子吸収の効率を示す量)が大きい化合物の開発が不可欠である。 ある種の色素を粘土鉱物に吸着させ、その複合体を膜化すると、色素の1分子あたりの二光子吸収断面積が溶液の状態に比べ10倍以上にまで大きくなる。本研究では、1,4-bis-(2,5-dimethoxy-4-{2-[4-(N-methyl)pyridinium]ethenyl}phenyl)butadiyne triflateを合成サポナイト(Smecton SA)との複合体膜にすることで、660nmにおいて13000GMにも二光子吸収断面積を示す固体試料の創製に成功した。DVD-Rの記録に用いられている波長で、かつ固体試料で二光子吸収断面積が10000GMを上回った例としては初めての例であり、当初の目標を達成することが出来た。 しかし、全ての色素の二光子吸収断面積が、粘土鉱物との複合膜化で増加するわけではない。そこで本年度は、どのような色素を、どのような条件で粘土鉱物と複合膜化すると、二光子吸収断面積が顕著に増加するか、集中的に検討した。その結果、多カチオン性の色素を用い、そのカチオンサイト間の距離が、平均アニオンサイト間の距離と一致する粘土鉱物を選び複合膜化すると、二光子吸収断面積が増加するという規則性を見いだすことが出来た。また、色素の粘土層表面への吸着密度が低いほど、増加が顕著であることもわかった。以上の知見に立脚し、光記録メディアとしての有用性の高いさらに短い波長領域で、二光子吸収断面積が大きい材料の創製を今後進める計画である。
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