研究概要 |
本研究はTHz周波数領域における固体ストリップ線路技術を確立し,A)極微量試料の誘電率変化を捉えるための線路構成を比較検討して性能や課題を明らかにすること,B)線路上を伝播するTHz波を用いた局所センシングの可能性を明らかにすること,が目的である.以下に項目ごとに成果を記す. A) 線路分岐:実際に曲げや分岐を持つマイクロストリップ線路素子を作製して,これら不連続点でのTHzパルスの透過特性を評価した.この結果2THz程度までの信号において0.5以上の透過係数が得られること,特に45度曲げとY分岐での特性が優れることを確認した.また曲げと分岐の両方を含む線路素子を作製し,差動検出において0.5THzまでの振幅差が±2%以内,位相差が±1度以内であり,1THzにおいても,それぞれ±10%,10度以内であることを確認した.これらの偏差はTHz波発生・検出効率を高めることで,さらに低減が可能である.ストリップ線路共振器:種々のスト.リップ線路共振器に関してFDTDシミュレーションを実施し,0.5THzに共振を持ちQ値が10以上の共振器を構成できることを明らかにした.次年度は実際に素子を作製し,微少試料に対する高感度検出を確認する予定. B) ストリップ線路に集積化した金属短針による局所検出に関するFDTDシミュレーションを進め,マイクロストリップ線路または3線コプレーナ線路において金属短針と線路のカップリングが良くなることを見出した.また,試料の伝導性に応じて観測される信号に数%程度の差が得られること,この差が金属短針自体の感度によって決まっていること,等を明らかにした.さらに,検出される差信号における周波数特性の起源を明らかにした.素子作製:めっき法による金属短針作製を試みたが,良質の短針は構成できないことが明らかになった.次年度は,さらにシミュレーションによって感度を向上させるデザインを探るとともに,ポリマーのディープドライエッチングを利用して短針を作製する.
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