本研究では、電子蓄積リングとレーザーを用いてテラヘルツ光から極端紫外光にいたる幅広い波長域でコヒーレント光を発生する手法の開発を進めている。基礎となる技術はレーザーによる電子ビームの微細加工である。微細な密度構造を持つ電子パルスは、その微細構造と同程度の波長でコヒーレント放射する。この手法を用いて、シンクロトロン光の広帯域特性とレーザーのコヒーレンス特性を併せ持った光源の開発を目指している。波長域は良質な光源の少ないテラヘルツ領域と真空紫外領域に狙いを絞っている。 平成21年度においては、まずテラヘルツコヒーレント光の発生効率向上に関する研究開発に取り組んだ。入射レーザーパワーに対するコヒーレント光強度の変化を計測した。レーザーパワーを増大するとコヒーレント光強度は増大するが、レーザーパワーが大きくなるとコヒーレント光強度が飽和する現象が観測された。結果は、今後、理論計算との比較を試みる予定である。また、レーザーにより形成される微細構造の情報を含んだテラヘルツ電場波形の直接計測を試み、これに成功した。 一方、コヒーレント高調波発生の広帯域化に関する研究開発では、コヒーレント高調波の高次成分を真空紫外領域で観測するための真空紫外用の分光器を加速器装置に組み込み、これまで観測することのできなかった真空紫外域でのコヒーレント高調波の観測を試みた。その結果、最高で9次までの高調波の観測に成功した。また、入射レーザーパワーに対するコヒーレント高調波強度の計測を行い、レーザーパワーが大きくなると高調波強度が飽和する現象を観測した。結果は、簡略化したモデル計算と定性的に一致し、今後、より精度の高いモデル計算との比較を行う予定である。
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