研究概要 |
本研究の目的は,背景空間が時間とともに変化する環境での幾何計算アルゴリズムを,数値誤差に対してロバストな計算手続きを伴った形で開発するとともに,それを現実問題へ応用することである.本年度は,電池を消費しながらモニターデータを無線送信するセンサーネットワークにおいて,電力消費によって電池の状熊が時間変化し通信できるセンサーノード対が変わるという状況で,センターへのリレー通信を達成するための分散的・局所的計算による経路生成アルゴリズムを構成した.これは,センサー位置を生成元とするドロネー三角形分割の辺のうち無線通信に使える短いものからなる部分グラフに近い構造を局所計算だけで作る手続きと,三種類のデータリレー手法を組合せて経路を生成する手続きとからなる.この経路生成法は,センサーノードが非一様に分布していても必ずセンターまでデータをリレーできることが保証されるものである.計算機シミュレーションによって,得られる経路の質を観測した結果,従来から使われているガブリエルグラフの利用や,相対近傍グラフの利用より高い性能をもつことが確認できた.また,もう一つの時間変化空間の例として,硬い板材から部品を切り取る際に残った板材の形が時々刻々変わるという状況において,カッターの動きが振動を発生しないように切断経路を計画するアルゴリズムも構成した.これは,振動を防ぐことのできる板材の形状を,切り取るべき部品を頂点とする木構造で表し,この木の葉に対応する部品を切り取ることによって目的を達成したものである.このアルゴリズムもソフトウエアとして実装し,非常に高速な計算で目的が達成できることを確認できた。
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