研究課題/領域番号 |
20360045
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉山 雄規 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (20196778)
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研究分担者 |
只木 進一 佐賀大学, 総合情報基盤センター, 教授 (00202169)
菊池 誠 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (50195210)
中山 章宏 名城大学, 理工学部, 教授 (60212106)
湯川 諭 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (20292899)
柴田 章博 高エネルギー加速器研究機構, 共通基盤施設計算科学センター, 研究機関講師 (30290852)
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キーワード | 交通流 / 自己駆動粒子系 / 渋滞形成 / 非平衡散逸系 / 非対称相互作用 / 動的相転移 / シミュレーション科学 / シミュレーション科学 |
研究概要 |
交通渋滞および自己駆動粒子集団の流動クラスタ発生の力学的機構は、非平衡散逸多体系の動力学的な相転移現象である。渋滞形成理論の実証実験および渋滞形成における非平衡過程の詳細データ計測のため、昨年度ナゴヤドーム球場アリーナにおいて円周サーキットにおける走行実験を実施し、本年度は現象解析を行った。今回の実験における20ランから得た測定データは、清浄化を終え、秒単位の車両の位置と速度による基本データを作成し終わった。今後、この1次データより様々な2次データを作成し多角的な分析が可能である。これまでの解析では、サーキット実験における渋滞発生が起こる臨界車両密度は、平均車両間隔で約8.8~10.0mであり、このあたりが300m程度の走行の長さ・速度スケールにおける臨界車間の範囲であり、渋滞形成が起こる一様流の不安定相の領域と思われる。高速道路における臨界車両密度との比較には物理的なスケール変換が必要だが、実験により世界で初めて臨界密度の数値を特定した。また平均車間8.8m以下の高密度では、渋滞は発生せず、低速な一様流が観測された。高密度状態における低速一様流の存在については、高速道路における観測は難しく、世界的な議論になっており、我々はボトルネックのないサーキット実験により初めて見出した。この成果は、交通渋滞の発生が多体相互作用による動的な相転移現象であるという物理理論を裏付ける重要な証拠となるものである。今回のドーム実験で確立した、広い領域における全体映像の撮影方法と秒単位での個体集団の運動の時系列測定の技術は、今後、群衆などの自己駆動粒子集団の運動の実験・測定に応用可能であり、精密データによる本格的な科学研究の道を拓くものである。
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