研究概要 |
我々の開発した波動問題の周期高速多法はフォトニック結晶やメタマテリアルなど,種々の工学的応用を有している。しかし,その適用範囲は完全な周期構造に限られる。本研究は、波動問題における周期高速多重極法の適用範囲を拡大し、Helmholtz方程式、Maxwell方程式、及び弾性波動方程式において、周期構造に周期的でない境界条件を与えた問題や、構造の周期性に乱れがある問題などの高速多重極法による解法を開発する事を目的とする。平成21年度は、共振アノマリの対策について検討を開始した。その際、アノマリ周辺で線型方程式が悪条件化するため、前処理法の研究を優先して行うことが必要となり、当初の予定を若干変更して、Helmholtz方程式の場合のCalderonの式を利用した前処理法について研究した。この結果、線型方程式を並べ替えるだけで十分な前処理効果を有する解法を開発することができた。Maxwell方程式への拡張やアノマリの回避策そのものの研究については次年度に継続することとなった。なお、波動方程式の周期問題の時間域解法についての研究も行い、従来難しかった周期構造の斜め入射問題が安定かつ高精度に解けるようになった。3次元動弾性学におけるNavier-Cauchyの運動方程式の周期多重極法の研究においてはMaxwell方程式の研究で得られた手法を移植し、異方周期問題、および周期構造の単位形状が立方体から極端にかけ離れた場合に拡張することができた。また、見かけの固有値問題に対応するためにBurton Millerの方法を実装した。
|