研究概要 |
ナノ材料に表面に異種原子の結晶を成長させ,これにより発生する巨大な真性ひずみを利用したナノ材料の曲げ加工技術を確立し,曲面を有する高次ナノ構造体創製を目的とする本研究の平成21年度の成果は以下のとおりである. 1.ナノワイヤの弾性係数と強度を計測できる作製した光散乱像観察に基づく試験装置を開発した. 2.各種ナノ材料を合成できる管状反応炉を作製した. 3.上記管状反応炉を利用して,Cr被覆CuOナノワイヤをArガス中で600℃に加熱した結果,効率的にナノコイルが形成できることを見出した.これは,コア部のCuOの融点が被覆金属の融点に比べ低いために,コア部のみにクリープ流動が起こり,真性ひずみ駆動の曲げ変形を阻害していたコア部の変位拘束が解放されたためである.この方法すなわちコア流動法は,真性ひずみを利用した曲げ加工を飛躍的に効率化できる画期的な手法である. 4.分子動力学シミュレーションにより,曲げ変形に及ぼす格子不整合度,結合エネルギーの相違,膜厚の影響を調べた.膜厚の増加により曲げは減少した.また,膜とナノワイヤの結合エネルギーの相違の影響は,格子不整合度の影響に比べ極端に小さい.しかしながら,最大の曲率を与える格子不整合度の値は,結合エネルギーの相違に依存することがわかった. 5.単一のナノワイヤをマイクロカンチレバーで捕捉し,スパッタ用真空チャンバー内で,ナノワイヤを配置することにより,明確な条件でナノワイヤに製膜できるようになった. 6.原子間力超音波顕微鏡技術の応用により,ナノワイヤの直径方向の弾性の計測やナノ領域の加工に関する基礎技術を開発した.
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