研究概要 |
1.試験温度がウエット材の等寿命線図に及ぼす影響の解明:飽和するまで水分を吸収させたウエットな平滑材試験片を用いて異なる応力比の疲労試験を室温と高温で行い、試験温度の違いがウエット材の等寿命線図に及ぼす影響を明らかにした。具体的には、擬似等方CFRP積層板のウエット材を用い、室温と高温のそれぞれについて、4種類の応力比R=0.1,0.5,10,χ(臨界応力比χ=圧縮強度/引張強度比)による定常疲労試験を実施した。得られた試験結果と前年度に取得したドライ材の試験結果を比較し、吸湿による影響を評価した。また、研究代表者が提案する非相似形等寿命曲線のウエット疲労条件に対する適用性を調べた。この結果、以下の成果が導かれた。(1)温度に拘わらず、吸湿によって圧縮強度が約5%低下する。(2)疲労強度は5~10%低下する。(3)提案した非相似形等寿命線図法は、吸湿の有無、温度の違いに拘わらず、有効に利用できる。これらの成果は複合材料の疲労強度の解明と信頼性の高い効率的な寿命評価技術の確立に貢献する。 2.積層方向の室温・高温疲労荷重がドライ材の等寿命線図に及ぼす影響の解明:厚さの異なる一方向積層板[90]_n(n=12,16,20)の室温における疲労挙動の解明と等寿命線図の同定・モデル化(前年度から継続)を完了した。この結果、先に暫定的に報告した以下の成果が確認された。(1)引張-引張疲労は応力比の影響を強く受けるが、圧縮-圧縮疲労に及ぼす応力比の影響は小さい。(2)板厚の違いが疲労挙動に及ぼす影響は、引張疲労については顕著であるが、圧縮疲労については小さい。(3)非相似形等寿命線図をトランスバース疲労に応用した場合、圧縮疲労について記述精度が低くなる。(4)この問題を克服するため、新たに4領域形の非相似形等寿命線図を開発し、実験結果との比較に基づいて、その有効性を検証した。これらの研究成果は非相似形等寿命線図を用いて高度化された新しい寿命解析法が構築できる可能性を示唆している。現在準備を進めている高温疲労についても同様の結論が期待される。
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