本研究では、分子動力学の時間スケールのギャップの問題を解決し、長時間スケールのシミュレーションを可能にする位相空間サンプリング型分子動力学法の開発を行う。具体的には、加速MD手法とNEB法を有機的に結合する。加速MD手法は、あらゆる起こりうる反応経路をサンプリングするための手法として用い、サンプリングされた反応経路をNEB法によって詳細解析する。研究期間内では、最初の適用先として、半導体素子の単結晶シリコンの転位生成の初期過程を取り扱う。 平成21年度は。加速MD手法とNEB手法を結合した位相空間サンプリング分子動力学シミュレータの開発を行った。加速MD手法で得られた、様々な原子の軌跡を使って、NEB法を行うソフトウェアを開発し、これらを統合した、位相空間サンプリング分子動力学シミュレータの開発を行った。成果は、Journal of Applied Physicsに投稿され、採択された。次に、転位の生成過程の電子状態計算とそれを表現する分子動力学ポテンシャルの開発を行った。成果は、Acta Materialiaに投稿され、採択される他、開発プログラムをhttp://www.fml.t.u-tokyo.ac.jp/potenfit/で一般公開した。最後に、転位の生成過程の状態サンプリング、活性化エネルギと状態のテーブル化を行い、様々な応力場(応力場の形態・強さ)での転位生成、発生起点の状態依存性(表面、界面、再配列)などについて詳細に検討した。成果は、現在Journal of Applied Physicsに投稿中である。
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