研究概要 |
研究計画初年度の本年は、基本的データを十分に取得すべく環境制御用に用いる恒温恒湿層を現有のそれに加えてもう1台増設し、実験能率を向上した。これにより、ポリシリコンの疲労挙動を等価き裂進展則として記述するパリス則のパラメータの値が、ノッチの有無にかかわらずほぼ同一であることを世界に先駆けて見出した。この結果は年度末に次年度の国際会議(Transducers '09,発表採択率約50%)での発表が既に決定している。また、単結晶シリコンウェハからエッチングにより作製された試験片についてはエッチング損傷の厚さ方向不均一性により薄膜飼料と同様な応力の2次元近似による強度評価が困難であったが、厚さ方向の損傷分布を定量化して3次元の応力分布に対する破壊確率を解析することで、薄膜の場合と同様に強度がノッチの有無にかかわらず同じ等価き裂分布により決定されていることが明らかとなった。一方、環境変化に対する疲労挙動パラメータの違いに関する検討ついては、特に高温試験装置の稼働に不具合が生じて実験の進捗が遅れ、研究計画に織り込まれていた次年度以降の疲労試験に交えてリスケジュールすることとなった。しかし、短時間の強度試験には既に成功し、不活性環境中での強度が湿潤環境下のそれに比して有意に大きいという、疲労機構解明の端緒になりうる興味深い結果を得ている。 上記疲労試験と並行して、疲労損傷の電子的センシングのためのデバイスの試作を行ったが、残念ながら研究組織に所属する研究者のデバイス作製に関する経験不足から設計段階のミスを看過する結果となり、所望の特性が得られずに年度を終了した。この点についてはプロセスの一部を依頼したファウンドリサービスに協力を依頼して解決策を協議しており、次年度前半には一部を改善して特性を改善したデバイスの完成が期待されている。
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