研究概要 |
平成20年度に開発した,その場観察統合化ナノメカニカルテスティングシステムを用いて,蒸着により成膜したナノ金属薄膜の変形特性とそれらの薄膜/Si界面のはく離強度特性に及ぼす拡散性吸蔵水素の影響について検討した。 この結果,Ni, Cuのナノメートル厚の薄膜の降伏点は水素を吸蔵することにより低下すること,また,水素吸蔵によりNiの塑性変形が助長されるため,Ni/Si界面の見かけの界面強度は上昇するものの,水素吸蔵の有無によるNi薄膜の塑性変形の違いを考慮すると界面強度そのものには水素吸蔵の影響は見られないことを示した。一方,Cu/Si界面では,見かけの界面強度は低下し,しかも界面強度そのものが水素吸蔵により低下するため,水素吸蔵の有無によるCu薄膜の塑性変形の違いを考慮して評価した界面強度も水素吸蔵により低下し,これらの機構について考察を加えた。さらに,高強度鋼に対して押し込み負荷を加えると,拡散性水素を吸蔵した条件下においてのみ,水素ぜい化に起因するき裂が,圧痕周辺から発生・伝ぱすることを明らかにした。このき裂発生・進展過程を模擬するために, 押し込み過程を有限要素解析により解析して,き裂発生の力学的条件について検討を開始し,併せて,長時間の試験を必要とする環境ぜい化き裂発生・進展の下限界特性評価を,比較的短時間試験より求めることができる可能性について考察を加え,短時間試験法としての試験法の開発とその有効性について検討を開始した。
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