研究概要 |
本研究は以下に示す4課題の遂行を目指しており,本年度の成果を課題ごとに併記する. (1) 生体適合圧電材料MgSiO_3およびBaTiO_3多結晶薄膜の誘電率および圧電特性の高精度予測,および高配向正方晶構造薄膜の成膜を実現するために最適な基板材料の探索を行った.その結果,チタン酸ストロンチウムSrTiO_3および銅Cu基板上に新規圧電材料であるMgSiO_3の成膜に成功した.圧電定数も最高120pm/vという薄膜では既存の鉛含有の有害圧電材料薄膜のPZTの特性に近い値を示した.今後は安定したRFマグネトロンスパッタおよびヘリコン波スパッタの成膜条件探索を続け,実用化を目指すことになる.トリプルスケール解析により最大誘電率および圧電特性を示す既存の鉛フリー圧電材料BaTiO_3の多結晶薄膜の最適方位分布(集合組織)の予測を行いその検証のために,RFマグネトロンスパッタ成膜を行った.解析による予測結果と実験結果との整合性があることが確認され,良好な圧電特性を得た.(2) RFマグネトロンスパッタ装置"により,100nm以上の膜厚の高配向MgSiO_3およびBaTiO_3の薄膜高速成膜を実現することを目指した.平成21年度に導入したキャノンアネルバ製のスパッタ装置により安定した300-900nmの膜厚を得た.この課題は解決された.(3) 圧電薄膜モノモルフ型アクチュエータの作製とマイクロポンプシステムの設計・試作は,MEMS加工のためのマスク作製,エッチング技術を確立したがMEMSへの圧電材料成膜の導入は来年度以降とした.(4) Pt薄膜の表面にグルコースオキシダーゼを固定し超微量電荷取得に成功した.しかし,リチウム2次電池への蓄電システムを構築するためには新たに電気回路設計を行い,起電力・電流に関する基礎データを得る必要があり,現在,2次電池材料の性能評価と蓄電システムの高効率化に関する基礎的な実験を遂行中である.
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