研究概要 |
昨年度に引き続き以下に示す主要4課題を対象として研究を行い,新たな成果を得た.本年度の研究により,新規生体適合圧電材料MgSiO_3アクチュエータによるマイクロポンプの創製,片持ち梁構造モノモルフ発電システムの創製に成功した. 1 生体適合圧電材料MgSiO_3(MSO)のトリプルスケール解析および新たに開発した基板との整合性評価手法により,基板材料としてCuおよびSrTiO_3を採用し,高配向の多層薄膜の結晶成長が可能であることを見出した.既存の生体適合圧電材料BaTiO_3を対象とした基板探索を行いSrTiO_3が最良であることを確認した. 2 本年度はRFマグネトロンスパッタリング装置により(101)方位MSO薄膜の多層化を行った.単層の膜厚700nmを多層成膜する試みに挑戦したが,5層以上の多層化において良好な結晶成長ができなかった.スパッタ創製とポストアニールにおける最適温度の探索等,薄膜結晶成長不良および層界面の不整の発生原因の解明等の課題を残した.最終的には,4層MSOで約3μmの薄膜創製に成功した.多層薄膜の細胞毒性評価実験を行い,毒性がないことを確認した. 3 昨年に引き続きSi/Pt/Cu/MSO/Cuモノモルフ型アクチュエータの創製技術開発を行った.本年度は4層MSO薄膜を用い,ポンプ能力の向上を試みた,血液・血清の搬送およびナノメディシンの排出を目的としたBio-MEMSデバイスのANSYSによる構造設計と加工プロセス設計を行い,MEMSプロセスによりマイクロポンプ送液システムを作製し,水および血清の搬送実験を行った.マイクロポンプの設計では0,2μl/secの搬送能力が要求されたが,実際のポンプシステムでは7nl/secの送液を達成した.目標に対しては,なお30倍以上の搬送能力を得る必要があり,弁無し流路の改良,高出力MSO多層薄膜圧電ポンプの創製が必要であり,課題を残した.しかし,新規材料であるMgSiO_3による送液成功は世界初といえる. 4 酵素燃料電池の製作では,グルコース捕捉による発電システムの試作を継続して行った.また,昨年度に引き続き,片持ち梁構造を持つモノモルフ型多層MSOを作製し,共振により発電に成功した.しかし,出力電圧が数mVであり,リチウムによる蓄電には昇圧が必要であり,現在昇圧システムの開発を継続中である.課題は出力電圧の向上である.
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