本研究の目的は、竹及び木質パルプからその強さの根源であるMFC(Micro-Fibrillated Cellulose)を効率的に取り出し、その有効利用を図ることである。MFCを機械的操作により取り出そうとすれば、Cluster構造を呈する(NFC:Nano Fiber Cluster)。本研究では、はじめにじん性向上と耐熱性の向上が強く望まれている環境適合材料:PLA(ポリ乳酸)のフィブリル化した竹単繊維/BNFCによる特性改善を試みた。その際、フィブリル化度=NFCの構造複雑性を新たな指標:フィブリル化度αを導入し、定量的に評価した。フィブリル化が進むと吸水性の高いセルロースの表面積が増す。そこで、αとして吸水率を用いて表すこととした。PLAとの複合では、α=3.5が最も適切な射出成型品ができることを見出した。Celluloseを主体とするNFCを適切に固化できれば、その高い特性が期待できる。強度だけでなく、結晶性繊維の繊維方向の線膨張係数は鉄の1/10以下である。そこで、低線膨張係数を生かして高い曲げ強度を有すると半導体プルーブディスク用材料を開発することができた。MEMS用の光硬化エポキシ樹脂はじん性が低く、剛性を低下させずに高じん化する方法が期待されている。脱LigninしたNFCは透明であり、密度も1.5と小さい。寸法が小さく、樹脂中で均一分散する。わずか1%未満のNFC添加により、その破壊じん性値を2倍まで高めることができた。ここで、エポキシ樹脂の特性を損なうことなく親水性のNFCを分散させるため、溶剤置換法を開発した。NFCの少量添加でエポキシ樹脂が高じん化することから、これを先端複合材料の母材の変性に用いた。その結果、僅か0.3重量%NFCをカーボン繊維強化複合材料のエポキシ母材に添加することで、高サイクル疲労寿命が飛躍的に向上する結果がえられた。
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