近年、急速に開発研究が進められてきたナノ材料を積極的に活用した新しいナノセンサや、革新的なナノシステムを開発することで、高度付加価値社会の実現が期待されている。そこで本研究では、ナノデバイス開発に必須となるナノ材料単体のナノメカニクス特性の高精度評価を目的に、『ナノ材料専用マルチフィジックス特性評価デバイス』の新開発、および同デバイス上の所望の位置にナノ材料を設置するための技術開発を実施する。 研究の第二年度に当たる平成21年度は、1)マイクロマシニング技術を援用したナノ材料評価専用MEMSデバイスの製作、2)第一年度に開発した3軸ナノステージの性能評価を行った。 1)においては、ナノ材料引張駆動用の櫛歯型静電駆動マイクロアクチュエータを含んだ、MEMSデバイスの作製に成功した。また、静電駆動アクチュエータの変位を読み取るための静電式変位センサもデバイス内に併せて集積し、センチの機械的な動きを顕微鏡変位計測システムによって評価した。 一方、2)においては、PZTアクチュエータを用いた超小型3軸ナノステージを開発に成功した。FE-SEM内に設置することを目的にしているため、同ステージの外形寸法は20mm立方以内に収まるように設計している。また、ナノ材料の捕獲、操作、固定を目的にしていることから、100nmの変位分解能と5mm移動距離を目指し、PZTパルス駆動機構を新規に開発した。ステージの駆動評価実験では、微動分解能10nm、動作距離±2.5mmの性能であることが確認された。ただし、PZTへの電圧印加した後、ステージを放置状態にした場合、PZTのチャージ変化に伴うクリープ現象があることが明らかになった。今後は、このクリープ特性を詳細に調べて、高精度な位置決めを実現できるようにする予定である。
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