研究概要 |
ヘリウムベースの大気圧水蒸気プラズマを照射することにより、SiC,WC等の高硬度難加工材料の表面が軟質化することを見出した。これらの材料に対してナノインデンテーション試験により硬度を測定したところ、単結晶SiCは約1/8に、WCは約1/40に低下することが分かった。水蒸気プラズマを照射したSiC表面のXPS測定ではSi-O結合の増加とSi-C結合の減少が見られたことから、表面が酸化していることが示唆された。また、酸素プラズマを照射した場合と比較すると水蒸気プラズマを照射した方の酸化レートが大きいことも分かり、OHラジカル(2.80V)とOラジカル(2.42V)の酸化ポテンシャルの差により酸化レートの差が生じたと考えられる。これらの結果を踏まえ、単結晶4H-SiC(0001)on-axis基板に対して酸化セリウム砥粒を用いた水蒸気プラズマ照射援用研磨を行ったところ、スクラッチフリーかつステップ/テラス構造が見られるほどの原子レベルで平滑な表面が得られた。また、反射高速電子回折(RHEED)によりプラズマ援用研磨前後の結晶性を評価したところ、研磨前に存在していた格子歪が除去されて理想的な結晶格子間隔を得るとともに回折スポットの半値幅が減少することが確認できた。これらの結果は母材であるSicよりも軟質な酸化セリウム砥粒を用いることでスクラッチフリーかつダメージフリーな平滑化加工が行えたことを意味するものであり、硬脆機能材料の高能率・高品位加工を実現する新しい加工法として発展する可能性を示せた。
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