研究概要 |
本研究では大面積短パルス電子ビーム照射による金型仕上げ法を金型表面の平滑化だけでなく,平滑化と同時に処理できる新しい表面改質技術として確立し,実用技術とすることを目的としている. 本年度においては,まず大面積短パルス電子ビーム照射したSKD11表面の耐摩耗性について,往復しゅう動型摩擦摩耗試験機を用いて評価を行った.その結果,大面積電子ビーム照射により表面硬度は若干低下するものの,その表面組織は母材と異なる結晶粒の小さい緻密な組織となるため,摩擦係数,耐摩耗性にはほとんど変化がないことが分かった.ビームのエネルギー密度や照射回数などの照射条件による耐摩耗性,摩擦係数の変化も見られなかった. 次に,電気化学測定システムを用いて電子ビーム照射面の耐食性を評価した.金型表面は射出成形時に樹脂から発生する腐食性ガスや離型剤により腐食され,それが金型寿命に影響する.また金型保管時においても酸化が進行する,照射回数やビームのエネルギー密度を変化させて照射した鉄鋼系金型材料試料に対してアノード分極電流を測定し,耐食性を定量的に評価した結果,電子ビーム未照射面と比較すると耐食性が大幅に向上することが明らかとなった.また,ビームのエネルギー密度,照射回数の増加とともに耐食性が増加することが明らかとなった.これは照射面に緻密な組織が形成されることが主要因であると考えられ,SKD11の場合には耐食性の高いCr成分が均一に分布することも関係していると考えられる.
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