研究概要 |
本研究では大面積短パルス電子ビーム照射による金型仕上げ法を金型表面の平滑化だけでなく,平滑化と同時に処理できる新しい表面改質技術として確立し,実用技術とすることを目的としている. 本年度においては,光学部品や半導体部品用の金型材として超硬合金やセラミックスの需要が高まっている状況を受けて,超硬合金およびセラミックスの表面仕上げの可能性について基礎的検討を行った.その結果,超硬合金,セラミックスに対しても,大面積短パルス電子ビーム照射によって表面平滑化を短時間に行えることが分かった.ただし,その低い熱伝導率のため,金属材料よりも低いエネルギー密度の条件で電子ビーム照射を行う必要があり,また平滑化が可能となる照射条件範囲も狭いことが判明した.得られる表面粗さは数ミクロンRz程度であるが,表面の平滑化に伴い,超硬合金においては表面光沢度が向上することが分かった. 次に,SEM,TEMにより電子ビーム照射表面の性状を観察するとともに,EDXによってその成分変化について検討を行った.その結果,超硬合金表面には数ミクロンの薄い再凝固層が形成され,その層内では母材組織よりもWC粒の小さい組織となっていることが分かった.また,バインダーのコバルトが均一に分布していることが分かった.さらに,マイクロビッカース硬度計を用いて,表面硬度および深さ方向の硬度分布測定を行ったところ表面硬度は多少減少していた.しかしながら,往復しゅう動型摩擦摩耗試験機による摩擦摩耗特性を評価を行ったところ,電子ビーム未照射の超硬合金の研削面と摩擦係数.耐摩耗性に大きな差はないことが分かった.
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