研究概要 |
歯車の損傷は, 産業機械にあっては歯車装置の停止に伴う大きい経済的損失をもたらし, 輸送機械では人命に直接関わる事故に繋がる恐れがある. したがって, そのリスク管理は極めて重要である. 一方で, 歯車装置には一層の小型軽量化と長期信頼性の確保という要求が科せられている. これに応えるためには, 設計段階において, 歯車の損傷確率を評価し, 信頼性を考慮した寿命を推定することが不可欠である. そこで, 機械・装置のリスク管理に不可欠な動力伝達用歯車の強度と寿命を評価し保証する方法の確立を最終目標として, 今年度は以下の研究を行った. 1. ひずみ分布と繰返し負荷による変化の非接触計測法の確立 2. ひずみ分布の変化に基づく損傷指標の同定 3. 繰返し負荷を受ける歯のひずみ分布の計測 4. 介在物に着目したピッチング強度の推定 非接触ひずみ分布計測法として, 負荷による変位を画像計測する方法を採用した. 研究1および2では歯車と同じ材料の平板試験片を用いることにし, 画像計測の領域を適正化することで広い領域のひずみ分布を精度良く計測する方法を見出した. また, 損傷力学に基づいて, 繰返し負荷を受ける材料のひずみの変化から, 損傷変数と呼ばれる指標を数値的に求める方法を検討した. 研究3では, パルセータ試験機を用いて浸炭焼入れ歯車に繰返し負荷を与え, 上記の画像計測によって歯のひずみ分布を計測した. そして, 平板試験片で求めた損傷変数を用いて寿命評価を試み, 結果を速報として報告した. 研究4の成果とともに次年度の国際会議でも発表予定である.
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