研究概要 |
歯車の損傷は,産業機械においては歯車装置の停止に伴う大きい経済的損失をもたらし,輸送機械では人命に直接関わる事故に繋がる恐れがある.したがって,そのリスク管理は極めて重要である.そのため,歯車の強度設計においては損傷確率を評価し,信頼性を考慮に入れて寿命を推定することが必要である.本研究課題は,動力伝達用浸炭歯車の強度と寿命を評価し保証する方法の確立を目標としており,その手段として損傷力学を用いることにした.しかし,損傷力学は概念こそ確立していると思われるが,具体的な損傷評価パラメータについては種々の算出法が提案されている段階であるので,浸炭歯車の損傷確率評価や寿命推定にふさわしい損傷パラメータの導出も本研究の一課題である.本年度は,繰り返し負荷を受ける浸炭材料における損傷の蓄積,すなわち縦弾性係数などの材料定数の変化を算定するために,平板浸炭試験片に繰り返し荷重を与えて,疲労の進行に伴うひずみの計測を継続するとともに,ひずみの計測に用いる画像相関法において,より高精度・高分解能を実現するための試験片処理方法の考案と相関法プログラムの改良を行った.一方で,平板試験片のひずみ変化から各種損傷パラメータを算出し,浸炭材の損傷評価にふさわしい計算方法を探査した.求めた損傷パラメータの変化をマスターカーブとして採用し,繰り返し負荷を受ける部材の損傷程度や余寿命を推定するシミュレーション法を考案した.その方法を用いて,浸炭歯車の余寿命評価を行った.
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