研究概要 |
宇宙機器のための新しい潤滑法として提案している「超高真空中トライボコーティング法(摩擦支援型蒸着膜形成法)により発生する超低摩擦機構の解明と,その低摩擦発生機構にもとづいた従来法では実現不可能な低摩擦を確実に与えるトライボコーティングシステムの設計指針を確立することを最終目的とする本研究において,2年目の本年は,トライボコーティングの潤滑特性(本年は振動特性に着目した)に極めて大きな影響を及ぼす成膜前の表面自由エネルギーの影響を実験的に明らかにした 得られた具体的な結果は以下の通りである. (1)成膜前の洗浄方法により玉軸受内輪の表面自由エネルギーを30.6mJ/m^2から42.2mJ/m^2まで変化させた場合,トライボコーティングを施した玉軸受の振動加速度は,11.8m/s^2から2.25m/s^2まで低減した. (2)十分な洗浄と最適な成膜条件の下でAgのトライボコーティング膜を施した玉軸受を用いることにより,従来使用されている玉軸受を用いた場合に得られる摩擦振動値2.65m/s^2と比較して低い摩擦振動値1.86m/s^2が得られた. (3)玉軸受内輪転送面の表面自由エネルギーの差は,トライボコーティング時における球から内輪転送面への移着膜の大きさおよび均一性の違いとして現れ,それが振動試験終了時のAgのトライボコーティング膜の形態の違いおよび得られる振動加速度の違いとなることを実験的に明らかにした.
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