研究概要 |
関節軟骨より酵素消化法により単離した軟骨細胞を,三次元担体であるアガロースゲルに播種した再生軟骨モデルを作成し,その表面にCO_2インキュベータ内設置型転がり滑り負荷装置を用いて摺動刺激を負荷しながら3週間程度三次元培養した.その結果,純滑り条件下では負荷位置付近のモデル表面が摩耗するため,負荷位置直下では軟骨細胞による組織形成が認められず,その周辺部においてコラーゲン線維とグリコサミノグリカンによる再生軟骨組織が認められた.また,コラーゲン線維とコンドロイチン硫酸,ケラタン硫酸を多重染色法により個々に染色し,導入した共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察することで,分子量の大きなコンドロイチン硫酸がコラーゲン線維と共に細胞周囲に厚い組織を形成し,分子量の小さなケラタン硫酸がモデル全体に拡散した組織形態が明らかとなった. また,再生軟骨モデルに繰り返し圧縮-せん断変形負荷を与えながら培養する実験を行い,10%の単軸圧縮変形のみを与えた場合と比較し,10%の圧縮変形と5%のせん断変形を組み合わせた繰り返し二軸変形負荷を与えた場合に,3週間培養した再生軟骨モデルの剛性が有意に増加することを見いだした.また,平行して行った蛍光デキストランを用いたゲル内物質輸送の可視化実験では,ゲルに圧縮変形を加えることで,ゲルの変形に伴い生じる移流の効果により,ゲル内の見かけの拡散係数が増加することを確認した.また,圧縮変形を繰り返すことにより,周囲流体とゲル間,およびゲル内における物質輸送が促進されることが認められた.この傾向は,再生軟骨モデルの力学負荷培養実験における,培地とモデル間の物質輸送に関する知見とよく一致した. 加えて,培地中のアスコルビン酸濃度を最適化することにより,軟骨細胞によるコラーゲン線維の産生と三次元的な組織構造の構築が促進され,培養後のモデル剛性が上昇することを見いだした.
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