研究概要 |
速度3成分の同時計測を行い,擬似衝撃波と噴射により生じる流れ場の乱れ構造調べるために昨年度導入したステレオPIVの不確かさ解析を行った。その結果,主流速度約500m/sの流れ場で主流方向速度成分に約6%,横断面内速度成分に約4%の不確かさが含まれるが,噴流部や境界層の乱流速度変動はそれよりも大きく,ステレオPIVによって平均流速分布だけでなく,乱流速度変動分布も計測できることが分かった。このステレオPIVを用いて,実際に擬似衝撃波中に噴射を行った場合の速度計測を進めつつある。 噴射気体濃度の計測については,アセトンPLIFを用いた実験の成果を4編の論文にまとめて米国航空宇宙学会の論文集に投稿した。うち1編は掲載済み,2編が採録決定済み,1編が現在査読中である。また,ヘリウム,アルゴン及びクリプトンを噴射気体として,分子量の違いが乱流構造に及ぼす影響を調べた。さらに,アセトンPLIFより簡単に噴射気体濃度を観測できる,微小液滴をトレーサーとしたMie散乱による可視化を行い,その適用性を調べた。 流れ場の数値シミュレーションとして,Large Eddy Simulation(LES)を行い,2方程式乱流モデルを用いたレイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式(RANS)による結果及びアセトンPLIFを用いた実験結果と比較した。LESはRANSより実験結果に近い平均噴射気体濃度分布を与えたばかりでなく,濃度変動の空間二点相関でも実験結果と非常に近い分布を与えることが分かった。この比較から,LESは超音速流中への噴射により生じる乱流混合場を,平均的のみならず,乱流の大規模構造まで的確に再現しており,超音速混合のシミュレーション手法として非常に有力であることが確認された。
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