乱流の普遍性の観点から境界層中の圧力統計量の性質について実験的に調べた。乱流圧力場の普遍性という観点からは、Kolmogorovのスケーリング則の妥当性について考察した。変動圧力スペクトルをKolmogorov長さと粘性係数で規格化した場合、次元解析により、波数の-7/3乗に比例したベキ乗則の存在が予測される。申請者は、この-7/3乗則が観測されるのには、レイノルズ数がRλ≧600の条件を満たす必要があること、Kolmogorov定数は普遍とはならずレイノルズ数依存性を持つことを実験的に示した。即ち、速度場に比べて圧力場にKolmogorovの普遍性が実現されるには、より高いレイノルズ数が必要であることを明らかにした。同様の考えは、粒子加速度に関してもあてはめられ、Heisenberg-Yaglomの仮説と呼ばれている。現状では、直接数値計算(一様等方場)と理論から、加速度場についてもKolmogorovの普遍性は実現されないことが予測されている。Bodenschatzらの実験もこの結果を支持しているが、どのような理由から、何故、加速度場に普遍性が実現できないのかを引き続き考察している。新たに粒子加速度計測をおこない、Kolmogorovの普遍則について調べ、従来の数値計算や理論の結果と同じ傾向であった。しかし、異なる流れ場(格子乱流、噴流、後流、境界層)での結果を比較することから、乱流の大きなスケールの異方性が小さなスケールに浸透する過程が、速度場、圧力場、加速度場で異なり、これが普遍性の実現に差異をもたらしてることが明らかとなった。
|