研究概要 |
サンドエロージョンは,流体中に含まれる固体微粒子が壁面に繰り返し衝突し,壁面が機械的損傷を受ける現象であり,流体挙動,流体中の固体微粒子挙動,壁面形状変化が相互に干渉して起こる典型的なマルチ・フィジックス現象である.また,サンドエロージョンは,各種流体機械にとって致命的な現象として知られている.航空用ガスタービン(ジェットエンジン)では,型式承認時に安全性確認のための砂吸い込み試験が課されており,一定量の砂を吸い込んでもエンジンが健全に稼動することを実証しなければならない.サンドエロージョンに関する研究は,流体力学および破壊力学の両面から行われてきた.例えば,シンシナティ大学(米国)のグループは20年以上にわたり流体力学的な面から精力的な研究を続けている.しかし,彼らの研究は流体/微粒子/壁面変形の相互干渉(マルチフィジックス性)を考慮したものではなく,実験に基づくエロージョン量の相関式提案とその検証といった側面が強い.国内外でサンドエロージョンを研究している他のほとんどの研究者・グループも同様のアプローチを採用している.本研究は,申請者がこれまでに開発してきたサンドエロージョン数値予測プログラムを拡張・改良し,航空用ガスタービンの遷音速ファン動翼におけるサンドエロージョン現象を数値的に再現することによって,その発生原因・物理的メカニズムを明らかにすることを目的としたものである.平成20年度は,ファン動翼とともに回転運動する衝撃波を微粒子が通過する際の挙動のモデル化および検証計算を実施した.本研究により,斜め衝撃波を微粒子が通過する際には抗力が圧倒的に支配的であり,実用上は抗力のみを考慮すれば十分であることを明らかにした.
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