研究概要 |
本研究では、血液用ポンプや人工肺の使用に伴う血液と空気の接触による血液成分の損傷に関する問題を解決するために、血液ポンプにおけるキャビテーション発生条件の解明と抑制するポンプ形状について探ることを目的としている。これまで開発してきた二段式遠心血液ポンプが市販されている体外循環用血液ポンプと同等以上のキャビテーション性能を持っていることを確認した。キャビテーション予測に使用した数値計算モデルは、CFXに標準装備されている「簡単化されたRayleigh-Plesset方程式に基づくモデル」が実験結果によく一致することがわかった。 また、二段ポンプの血液ポンプとしての完成を目指し、羽根車のフロントシュラウドとケーシングの隙間を大きくし,かつ羽根車入口近傍にフェイスシールを設置することで,ケーシング壁面上で,溶血の原因となる高いせん断応力の発生範囲を大幅に減らすことが明らかになった。このような工夫により、一昨年度に設計したポンプと比べて、溶血の原因となり得る高せん断応力の発生範囲を約65%減少させることができた。また、吸込ケーシングとして、円形ケーシングを採用すると、ボリュートケーシングの場合にみられた定常渦が消滅し,血栓形成が抑制され得ることがわかった。これらの知見を活かして設計されたポンプは,十分な抗溶血性能とともに高い抗血栓性能を持つと考えられる。これを実証することを目的として本ポンプの製作を行った。
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