研究概要 |
従来法にない量産性と材料設計の高い自由度を兼ね備えた方法としてマイクロプラズマに着目し,シリコン量子ドットを連続的かつ大量合成するプロセスを開発した。従来技術(高真空ドライプロセス)と比較して,製造コストを大幅に低減できること,さらに連続処理であるためスケールアップ(大量合成)に対応しやすい,などの特徴があげられる。原料として四塩化ケイ素を用いており,これを水素プラズマで還元することでシリコン量子ドットを合成した。プラズマの反応時間を長くするほどナノ結晶のサイズが大きくなり,3nm-12nmでサイズ制御できることを実証した。結晶サイズを小さくするほどフォトルミネッセンスは900nmから650nmヘブルーシフトした。XRDの分析結果から,主としてSi(111)からなる微粒子が合成されていることを明らかにした。SiH_4を用いる場合と比較して,同じ粒径のシリコン量子ドットを合成するために反応時間が約30倍長くなること,また,残留塩素に起因して1000倍以上の反応速度で酸化されやすいことを明らかにした。カーボンナノチューブをマトリックスとして用い,シリコン量子ドットを薄膜化したデバイスを作成し電気特性を評価したが,残留塩素の悪影響により良好な電気特性を得ることはできなかった。in situ赤外吸収分光分析の結果から,サンプルを大気に暴露しなければ,水素または塩素で終端されたシリコン量子ドットが合成されていることを明らかにした。今後,シリコン量子ドットを発光デバイス等へ発展させるためには,完全に空気(酸素及び水蒸気)が遮断された環境でシリコン量子ドットを取り扱う必要性があること,そのために必要なデバイス設計指針を明示することに成功した。
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