研究概要 |
本研究は,微細多孔質体からなるガス拡散層(GDL)内の物質輸送現象の特性向上による固体高分子形燃料電池の高性能化を目的として,本年度は,微細多孔質体の酸素拡散係数測定システムの構築,と新形式GDLモデル装置の試作と含水状態の観測を実施した.酸素拡散係数測定装置の要である酸素吸収体としての酸素センサーに隔膜ガルバニ電池式酸素検知器を酸素吸収体用にメーカーと協力して改良た酸素吸収体を用いて微細多孔質体の酸素拡散係数計測システム構築を行った.隔膜ガルバニ電池の上方に試料ホルダを外気との気密性を確保して作成し,ホルダには従来用いられているGDLおよび新形式GDLを組み込み,乾燥状態から含水状態を含む含水率をパラメータとする条件下の酸素拡散係数測定を実施した.電解液変化による安定性,酸素拡散流束およびホルダ側濃度など,全般的な測定確度に係わる詳細な検討を行い,高精度測定のための問題点を絞った.さらに,フラディング限界を高めること,乾燥領域での適正な湿分の維持を図る目的で考案した,局所的に役割の異なる分布構造のぬれ性制御による新形式内部構造である親水性多孔質体と撥水性多孔質体を交互に配置する構造,すなわち撥水性多孔体の材質にはPTFE製とし,親水性多孔体としては炭素製GDL素材を試験した.その結果,GDL内の液水存在時のより高い見かけの拡散係数を実現することが可能になり,機能の有効性を確認した.
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