研究概要 |
水中に27.12MHzの高周波を照射した場合の液中プラズマの多点分光測定を実施した.水中プラズマの発光はHα,Hβ,O(777nm),O(845nm),OH(309nm)が強く発光するが,OHの発光分布のみが他の分布と比べて上側にシフトし,シフト量は圧力の増加によって減少する.電子温度の分布とOHラジカルの回転温度分布が得られた.圧力の増加にしたがい,電子温度は4800K~3300Kに減少し,逆に,OHラジカルの回転温度は1500~3700Kに増加する.電子温度の空間分布は約50kPaでその傾向が大きく変わる.その理由は,電極からの電子の支配的な供給形態が二次電子放出から熱電子放出に変化するためであることが,電極の自己バイアスの測定結果から明らかになった.また,OHラジカルの最大発光強度点の約1mm上側であることが明らかになった. 次に,液中プラズマの気泡の発生様式が調べられた.水中プラズマにおける気泡の発生様式は4つに分類することができ,水の沸騰と比較すると共通点が認められるが,fd値(気泡の離脱周波数f,気泡径d)が大きく異なる.これは,水中プラズマが通常の固体面の加熱による沸騰では実現困難な高熱流束領域での沸騰であるからである.また,サブクール状態で電極から離脱した気泡はプラズマを含まなくなるため急激に凝縮するが消滅せずに小さな気泡が残存する.これは水の化学変化によるもので,気体分析から約95%という高濃度の水素であることが判明した. 最後に電子レンジを使った有機溶媒の分解実験を実施した.750Wの電子レンジを用いた場合は,発生ガスの74%が水素であり,気体1mol当たりの生成エンタルピは73.9kJ/mol,水素1molを生成させるために必要なエネルギーは640kJ/molであることが明らかになった.水素ガスの生成効率に関しては,マイクロ波や高周波などの放電形態による大きな差異はなかった.
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