研究概要 |
水が重要な役割を演じる食品や生体の冷凍保存に対し,氷晶生成による損傷を最小限に抑えることが可能な水分分布とすることにより,冷凍技術の高品位化に資することを目的とした.具体的には,マイクロ波による常温減圧乾燥を冷凍操作の前に行い,食品内部の水分を表面に移動させることにより,冷却速度に制限のある内部を低含水率とし,氷晶による損傷を抑制しようとするものである.本年度は,この新しい手法の有効性を魚肉を対象として検証した.まず,生体内での水分凍結の様子を観察し,筋組織間の結合組織に氷晶が形成され,水分量が多い場合には大きく氷晶が成長し,組織を圧迫することを確認した.冷凍前の予備乾燥を行えば,この氷晶の成長を抑えることが可能となり,組織の変形量が減少し,解凍時の形状復元が良好になることがわかった.また,この変形量と復元量には密接な関係があり,限界値を越えて変形すると組織が崩壊して,復元が困難になることもわかった.さらには,復元挙動には解凍速度も大きく関与し,急速解凍においては組織外の氷結晶が解けることによって生じる水分を組織内に再吸収することが制限され,復元の程度が悪くなり,吸収のための時間を確保できる緩慢解凍の方が良好な結果となった.最後に,解凍後のドリップ量測定や食感・テクスチャー評価をも行い,予備乾燥によって若干の水分を減らしておくことが,ドリップ量を減少させ,テクスチャーも良くなる傾向にあるものの,脱水量には最適値のあることがわかった.
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