冷凍操作の前にマイクロ波による常温乾燥を行うことにより、氷晶の成長を抑え、冷凍保存の高品位化を可能とする新技術「マイクロ波デハイドロフリージング」の有効性を明確にすることを目的に、実験観察と数値シミュレーションによる検討を行った。その結果、以下の知見を得た。 1.生体の多孔質構造を模擬したPVAスポンジ実験により、予備乾燥による水分減少によって氷晶生成が遅れ、過冷却が進行し、平衡凝固点が降下するため、試料表面と中心の温度差が小さいまま均一に凍結することがわかった。また、氷晶の相当直径か減少するとともに、凍結試料中心の氷晶を表面よりも微細化することか可能である。 2.鯛や鯖を用いた実験から、予備乾燥による氷晶直径の減少が確認できるとともに、緩慢に解凍することによって組織内への水分の再吸収が可能となり、細胞形状の復元が可能であった。ただし、魚種によっては解凍過程中に再結晶化が生じ、組織内に損傷が生じる場合がある。凍結・解凍時の溶液濃度との関連が重要である。 3.組織細胞と外部溶液との物質伝達を考慮する二重セルモデルを作成し、冷凍過程における温度と溶質濃度挙動の解析が可能となった。これにより、予備脱水量とともに凍結時間が短くなり、最大氷晶生成帯を通過する時間が短くなるという実験結果と同様の結果を得た。また、試料の中心部に近づくほど細胞内外の浸透圧差が大きくなり、細胞収縮が進行する。 4.今後は、解凍過程のシミュレーションも加え、細胞組織内への水分再吸収と再結晶化の挙動を把握し、適切な予備脱水、冷凍速度、そして解凍速度の最適化プロトコルを開発することによって、魚種などの生体種に応じた方法を提示することが必要である。
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