研究概要 |
研究期間の2年目として,微小試料に対して熱分析,質量分析,形状観察が可能な複合ナノ熱分析システムの開発に必要なマイクロマニピュレーション技術の研究開発とマイクロカンチレバー式カロリメータによる熱・質量分析の特性研究を実験的に行い,走査型電子顕微鏡へのカロリメータの導入準備を行った。 マイクロマニピュレーションの研究では,先鋭化したキャピラリ管に微小ヒータを設置したメニスカスチップを開発した.これにより,管内の水により先端部の濡れ性が向上した状態で微小物体の付着・取り上げを行い,ヒータ加熱による先端部の乾燥により濡れ性を低下させた状態で微小物体の分離・設置を行うマニピュレーションが可能なことが示された。 カロリメータに関しては,マイクログラムレベルの試料に対して,熱の出入りと質量変化を同時に観察する実験により,その有効性が示された。さらに,温度走査により共振周波数がドリフトする課題が明らかとなったが,時間差計測により試料正味の質量変化がナノグラムレベルで観察できること,あるいはカンチレバーに異種材料を積層することで温度ドリフトを解消できる可能性を示すことが出来た。 電子顕微鏡への導入準備としては,真空環境下でのカロリメータの動作特性を調べ,周囲空気の影響を定量的に明らかにすると共に,真空環境でも熱・質量分析が実施できることが確認された。
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