沸騰伝熱、特に核沸騰熱伝達及びその限界熱流束に及ぼす加熱面性状の影響について、キャビティの幾何学的形状(表面粗さ、キャビティ形状、そのサイズ)と物理化学的性状(濡れ性)の2つに大別して実験的に調べ、その結果をフラクタル幾何学と接触角で整理し、両者を統一した表現法を構築することを目的とした。本年度は3年目の研究最終年度であり、プール沸騰で水平加熱面を用い、粗さはサンドペーパーの圧縮転写で変化させ、また、濡れ性は高温槽における保持温度及び加熱時間の制御で変化させる方式を採用した。粗さに関する研究の結果はよく知られるBerensonの結果とほぼ同じであった。ただし、通常の粗さの表現よりもフラクタル次元で整理する方がやや良いまとまりを見せた。一方、濡れ性の影響に関しては、実験後の接触角が実験前の処理に係らず、ほぼ等しい値となり、従って熱伝達への影響は顕著には現れなかった。特殊な加熱面として、初年度、2年度と同様、銅面にカーボンナノチューブを垂直に配向塗布した超撥水面でプール飽和沸騰の実験研究を行ったが、予想通り通常の銅面に比べ伝熱が劣化するものの限界熱流束は向上するとの興味深い結果が得られた。本研究は一般的な表面性状の表記法を確率することを目指したが、残念ながら、表面性状を大きく変えることは出来なかった。今後はサントブラスト面や人工キャビティ面を用意し、実験研究を継続することにしている。
|