近年の歩行ロボットの重要な課題の一つは歩行時の消費エネルギーを低減することである。 歩行のためのエネルギーを必要としない受動歩行が知られているが、その実現は緩やかな下り坂のみで可能である。平地や緩やかな上り坂ではエネルギーを供給する必要がある。しかし、従来のロボット関節の駆動技術を使うと、駆動モータと脚の関節が常に歯車減速機によって結合されているので、状況に応じて歩行を能動的な歩行から受動的な歩行へ切り替えることが困難である。本研究の目的は振りワイヤを使う新しい駆動方式を用いて、複雑な切替え機構を必要としない動的な歩行を実現することである。平成20年度には研究の土台になる2足受動歩行の機構を実験的に実現し、新しいアクチュエータのための部品の購入や設計を行った。新駆動方式を確立するためには市販されているワイヤから最も適したものを選定した。ロボットの歩行を評価するためには傾斜角度および進行速度が可変であるトレッドミールの製作を行い、ロボットの歩行を追跡するためのデジタルカメラ画像処理システムを準備した。また、消費エネルギーを最小化する制御技術を確立するためには3次元物理シミュレーションを行い、受動歩行の特性を位相平面内で評価した。緩やかな下り坂での継続可能な受動歩行を確認した。今後は平地や緩やかな上り坂での歩行を実現する。更に、考案した新駆動方式は生物の筋肉のように引張り力のみを発生するので、2関節筋への応用を検討し、基礎的な解析を行った。今後の研究課題はシステムの統合を行い、歩行の制御を確立することである。
|