研究概要 |
海中ロボット用電力供給・通信エネルギネットワークシステムの構築において,トランス間の結合係数とコイルの性能指数を表すQ値との関係について検討を行った.特に海中での使用を想定した場合では,媒質が電解質を含んだ海水となるため,大気中と比較すると伝送効率に与える影響が多少考えられる.つまり電磁気的に弱い結合を保ちつつ,効率を最大限に得るための制御方法を見出す事が最良となる.過年度までの検討においては,電磁誘導方式を用いて,電気的結合を最大に高め,伝送コイル間でのエネルギ蓄積密度を大きくし,大電力を送電する事を行ってきた.特に本研究が目指す海中エネルギーネットワークシステムにおいては,多数の海中ロボット間での電力のやりとり,若しくは基幹送電ステーションでのドッキングにより電力伝送を行う事を想定しているために,近傍での電磁誘導給電システムは非常に有効である.このシステムに関する基礎検討については,本研究課題により進捗が図られたが,海中での揺らぎや,より多動性を有する海中ロボットの動作を支援するためには,距離を隔てたロボットに対しても電力伝送できる事が望ましいと考えられる事から,本検討を行うに至った.検討結果として,周波数をkHzオーダからMHzオーダまで従来よりも拡充し,コイルの銅損を制御する事で,コイルQ値を向上させた.その結果,結合係数とQ値の積で示される伝送効率において,Q値に依存する割合が大きくなり,一方,電磁気的結合係数の依存割合を低減させる事ができた.この事は,電力伝送コイル間の空隙を大きくしながらも伝送効率を補償する事を意味しており,揺らぎの多い,3次元的自由度を持つ海中空間においては有効に動作すると考えられる.この検討結果では,伝送電力を100Wレベルで確保する事に成功し,過年度までの方式との併用を想定して,今後システム構築を更に進める事とする.
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