研究課題
本研究グループは平成17年度より風力発電設備の耐雷対策に必要な雷放電開始条件を研究対象とした雷観測を行い、その結果、風力発電設備での落雷の場合、数秒というオーダーの『前兆現象』が存在することを明らかにした。この数秒という時間があれば被雷対象である風車本体を風力発電の変電設備や電力系統から完全にかつ安価に切り離す事が可能となり、被害範囲を大幅に縮小することが可能となる。そこで本研究の目的の内2009年度は、(I)前兆電流を検出し、電力系統を切り離すためのトリガー信号を出力する回路の製作と動作確認を行う。(II)風力発電設備で落雷が発生する場合の地上電界マップを多地点での電界計測により描き、落雷が発生可能な最小電界値とその領域および何秒前まで予測可能かを検証する。(III)地上電界から落雷を予測するシステムを構築する。について検討を行った。現地での雷観測では、風車への落雷4例、避雷鉄塔への落雷9例の合計13例の落雷電流の計測に成功した。このうち風車への落雷4例中2例で前兆電流が見られ、避雷鉄塔では落雷9例中2例で前兆電流が見られた。(I)(II)については、上下2つの前兆電流検知レベルが5Aと-1Aに設定すると落雷の開始2秒前に全落雷の100%を検知することができ、6秒前に50%の落雷を検知することが可能であることが分かった。(III)については、自発雷の場合、風車設備近傍での地上電界が5分前から400V/m/分の割合で低下し、風車の風上側では5分~8分前に地上電界が正から負に反転することが分かった。従って、数分前に落雷を予知できる可能性がある。また、夏季正極性落雷およびスプライトを発生する落雷電流において、それぞれ世界初の観測に成功した。
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Geophysical Research Letters VOL.36, L05801
Journal of Atmospheric Electricity Vol.29, No.1
ページ: 13-21
Proceedings of IAMAS, Montreal Canada 00147