本研究では、種々の液体水素冷却超電導導体を想定し、これを使った超伝導応用機器の設計を行うための、液体水素の基本的な熱伝達特性を把握することを主たる目的とする。したがって、広範囲の圧力条件下でのサブクール液体水素の浸漬冷却および強制対流冷却特性に関して基礎データを収集する。 平成20年度は、既存の液体窒素用強制対流熱伝達実験装置を用いて、液体水素と同様に超伝導導体の冷媒として重要な液体窒素について、超臨界圧までのサブクール液体窒素強制対流熱伝達実験を実施した。この成果については、国際応用超伝導学会論文誌(IEEE Transaction on Applied Supercondcutivity)に報告した。また、液体ヘリウムを用いた超臨界圧強制対流熱伝達実験を実施し、液温・圧力・流速をパラメータとした熱伝達特性データを測定し、国際低温工学会(International Cryogenic Engineering Conference)にて報告した。これらの実験で得た知見をもとに、実験手法の確認、液体水素を用いた実験への展開上の課題を抽出し、液体水素強制対流熱伝達特性のための実験手法を策定した。そして、液体水素の超臨界圧までの実験が可能で、安全性を考慮して遠隔バルブ操作・計測を実現した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を設計・製作した。 次年度以降は、製作した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を用いて、発熱体を含んだ種々の大きさ・長さの円管流路や方形状流路を作成・設置し、広範囲な温度・圧力・流速の強制対流下での測定を実施する予定である。
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