研究概要 |
本年度は,IEC提案の500mm幅試料用の大形単板磁気特性試験器(SST)の試作器の特性を,その特性が十分に把握されているJIS提案の100mm幅試料用の小形SSTと比較することにより検討し,以下の知見を得た. 1.500mm幅試料用SSTと100mm幅試料用SSTで得られる磁気特性の比較 両SSTで測定可能な100mm(幅)×500mm(長さ)を用い,使用するHコイルおよびBコイルも共通にして,磁気特性(磁化特性および鉄損特性)の比較検討を行った.その結果,全磁束密度領域において,両者の差異が5~10%であった.一般的には,同一の試料を同一の試験器で評価した際には,試料を設置したままで励磁を繰り返す場合は1%程度の再現性を確保する必要があると言われている.試料を脱着した場合でも3%程度が目標とされており,両SSTの差異は,明らかに許容範囲を超えていた.そこで,測定精度に影響を与えると思われる諸因子を検討した結果,次項で述べる内容が,差異の主要因であるとの結論に至った. 2.ヨーク端面と試料との接触状態の評価 圧力紙を用いて検討した結果,従来から使用している100mm幅試料用SSTでは,ヨーク端面のほぼ全面が試料と接触していたが,今回試作した500mm幅試料用SSTでは,ヨーク端面の外側しか試料と接触していないことが明らかになった.SSTは,ヨークと試料で閉磁路を構成し,磁界の強さHや磁束密度Bがそれらの測定領域において均一になるように工夫されている.しかしながら,ヨーク端面と試料との接触状態が良好でないと,HやB分布の均一度が低下し,十分な磁気特性の測定精度が得られない.したがって,この点を早急に改良し,再度,両SSTの比較検討を行う予定である.
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