研究概要 |
本年度は,IEC規格で提案されている500mm幅試料用の大形単板磁気特性試験器(SST)のヨーク端面を再研磨し,測定精度低下の主要因と考えられる反磁界の影響について検討を行った.さらに,回送試験を実施して,100mm幅試料用の小形SSTと比較することにより,測定精度の検証を行った.実施内容および得られた成果の概要は,以下に示すとおりである. 1.励磁枠内全領域における反磁界の評価 85mm幅のHコイルを用い,幅方向500mmにわたって設置位置を変えながら,励磁枠内の磁界分布を測定した.その結果,ヨーク端面の再研磨前後で,磁界分布の均一度が向上していることが明らかになり,圧力紙を用いた検討結果も勘案して,ヨーク端面と試料の接触状態が十分に改善されていることが確認された. 2.500mm幅試料用SSTと100mm幅試料用SSTで得られる磁気特性の比較 ヨーク寸法が異なる2種類のSSTを用い,使用するHコイルおよびBコイルも共通にして,異なるグレードの複数の電磁鋼板の磁気特性(磁化特性および鉄損特性)について,比較検討を行った.その結果,一般的にコンセンサスが取れている「全磁束密度領域において,両者の差異は±3%以内」に収まり,標準的な試験器として使用可能であることが明らかになった. 2008年度から2011年度の4年間にわたる一連の検討によって,IEC規格の500mm幅試料用大形単板磁気試験器においては,ヨークが大形になることに起因して,ヨーク端面の平坦度が低下することを避け,試料との接触状態を良好に保つことが,特に重要であることが明らかになった. 今後,規格を改訂する際には,本研究で得られた種々の知見を活かすことが可能である.
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