研究概要 |
本研究では,電気機器内の磁気回路部に使用される代表的な鉄芯材料である電磁鋼板の磁気特性の高精度測定法を確立し,得られた技術を国際規格化することが狙いである.規格化に際しては,クリアすべきハードルが高いため,長年にわたる研究実績がなければ,達成は難しいと考えられる.諸外国では,磁性材料の磁気特性の標準測定法を専門に扱う国立の機関(例えば,ドイツではPTB(物理工学研究所),英国ではNPL(物理学研究所))が現在でも維持されており,技術が効率的に伝承されている.それに対して我国では,活発な研究活動を行っていた旧電子総合研究所の該当部門が廃止され,現在それに代わる組織はない.磁性材料がますます多用される時代になっており,また経済産業省の製造産業局に鉄鋼課があることからわかるように,我国における鉄鋼関連産業は重要視されているにもかかわらず,電気機器に使用される主な磁性材料である電磁鋼板の評価にかかわる研究を支える拠点が存在せず,諸外国に対する競争力が低下していることは明らかである.したがって,本研究を推進し,当該分野のレベルアップを図るとともに,我国の発展を担う鉄鋼関連産業の国際競争力を強化することは重要である.そこで本研究では,電磁鋼板の磁気特性測定法に関して,国際規格改訂の提案を念頭に置き,Hコイル法を用いた単板磁気特性試験法の国際規格化に向けた実用研究を目的としている.検討内容は,以下に示すとおりである. (1)回送試験に参加する予定の機関が保有する測定システムの基本的特徴を把握する. (2)回送試験で使用する単板磁気特性試験器(SST)を作製する. (3)Hコイル法の測定精度に影響を与える諸因子を検討する. (4)単板磁気特性試験法における磁界の強さ測定法の国際規格としてHコイル法を提案する.
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