研究課題
X線磁気円二色性(XMCD)分光を駆使した界面誘起非補償反強磁性スピンの計測ならびにスピン構造シミュレーションを通じて、通常の磁気計測法では窺い知ることのできない反強磁性スピンの磁化過程ならびに交換結合膜中のスピン系の磁場反転に対する非対称性の検出を行った。本研究の目的は、以上の実験・シミュレーションにより、非補償反強磁性スピンが強磁性/反強磁性積層膜で観測される交換磁気異方性に及ぼす役割とその微視的発現機構を解明すること、また、同発現機構に基づいた薄膜材料・界面微細構造設計を行い、極薄で大きな交換磁気異方性を導出し得る積層膜材料を開発することである。平成21年度までの局在スピン構造シミュレーションの結果を踏まえ、現実の交換結合膜材料系に即した磁気物性値パラメータを用いたハイゼンベルグ型模型で、強磁性層反転過程における反強磁性スピンの磁化過程のマイクロマグネティクスシミュレーションを行った。また、第一原理計算による、強磁性層/反強磁性層積層膜の電子状態計算を行い、XMCD実験で観測される界面非補償スピンの発生原因の検討ならびに、マイクロマグネティックスシミュレーションに用いた磁気物性値パラメータの意味づけを行った。結晶構造変化(fcc⇔bcc)に伴う積層界面の格子整合性、強磁性電子の遍歴性によって、交換磁気異方性の強磁性層組成依存性が定性的に説明できることを明らかとした。また、強磁性層にCo-Fe-Ni合金簿膜を用いた場合のMn-Ir基交換結合膜の一方向異方性定数ならびにブロッキング温度の強磁性層組成依存性を系統的に調べた。その結果、一方向異方性定数が大きくなる場合にはブロッキング温度が低下する負の相関が見られた。これは、反強磁性層内のスピンのねじれ構造による磁気エネルギーの蓄積と熱エネルギーによるスピン擾乱の効果が相殺するためと考えられる。
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