本研究では、量子細線レーザーを用いて0.1mA程度以下の低しきい値をへき開再成長T型量子細線の利点を生かして実現し、低しきい値の量子井戸レーザーと比較し、そしてそれらのデバイスが示すレーザー発振特性と光学物性を計測し、量子細線レーザーの利点や性能が上記の最初の理論予測どおりなのかどうかを検証することを目的とする。 制御性が高くラフネスや界面損傷が極めて少ないへき開再成長丁型量子細線レーザーを用い、共振器端面への誘電体多層膜形成と注入構造や界面品質の改善などを行って、O.1mA程度以下の世界最低しきい値での量子細線のレーザー発振を目指した。 これまでの最低しきい値電流0.27mAは、p層とn層が平行に配置された20周期丁型量子細線レーザーにおいて30Kで得られたものである。この直接の改良としてp層とn層が平行に配置された単一丁型量子細線レーザー、また、別のアプローチとしてp層とn層が垂直に配置された15周期T型量子細線レーザーの結晶成長を行い、プロセスと、端面アズクリープでのデバイス評価を行った。利得の絶対値は小さいが0.1mA程度の低い透明電流が得られており、端面高反射コートにより低しきい値発振が可能と思われる。 さらに、バランスおよびインバランスの場合の電子系・正孔系・電子正孔系の利得特性を任意の濃度かつ温度で調べることを目指し、ハートリーフォック近似理論をもちいて利得特性・スペクトルの計算を詳細に行った。また、実験で、電流注入型のT型量子細線レーザーに対して立体的な光学励起配置を工夫して、光励起を併用できるようにした。そして、実際に、光励起により等濃度の電子正孔対を付加することで、様々な濃度の電子および正孔が注入された際の利得を計測した。H21年度にもこれらの研究を継続し進展させる。
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