研究課題
本研究では、量子細線レーザーの低しきい値発振をへき開再成長T型量子細線の利点を生かして実現し、そのデバイスが示すレーザー発振特性と光学物性の計測から、量子細線レーザーの利点や性能が上記の最初の理論予測どおりなのかどうかを検証することを目的とする。そして、1980年台に提案予測された種々の効果や機構が理解解明し、低次元ナノ構造レーザー研究・開発の学術的基礎を築くことを目指している。光励起により半導体レーザー中にキャリア生成を行った場合は中性の電子正孔系が形成されるが、p-n接合から電流注入を行った場合には一般に非中性の電子正孔系が形成される。そこで、同一の量子細線LD試料に対して、光励起と電流注入により励起を行って導波路放出光スペクトルを測定し、そこからハッキ-パオリ-キャシディーの方法で利得スペクトルを求めた。中性電子正孔系の形成が期待される光励起の場合は従来のノンドープ系で得られている利得の特徴をよく再現した。一方、電流注入の場合には、利得ピークのレッドシフトやブロードニングなど新たな特徴が観測され、非中性電子正孔系における余剰キャリアの影響として解釈された。さらに、光学利得における余剰キャリアの影響をより明確に見るために、n型変調ドープによって余剰電子ガスを有する単一量子細線レーザーとノンドープの同型試料とを作製し、高反射コートを施したうえで光励起によって利得の形成の様子を比較した。非中性系では状態占有のため非常に低い光励起密度において利得が発生し、低しきい値でレーザー発振することが観測された。また、得られた利得スペクトルは、静的遮蔽ハートリーフォック計算と良い一致を示した。
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Physical Review B 80
ページ: 033307-1-4