本研究では、Sioナノ粉末の真空蒸着により低温で高品位のシリコン酸化膜をシリコン上に作製するのが目的である。初年度は基板を蒸着装置の外に取り出すことなくSiOx膜の蒸着とUV172nmの照射処理を行うために真空紫外光を既存の蒸着装置に取り付けたが、紫外光照射の効果が見られるもののさらにその効果を顕著にするため、今年度は、基板が紫外光照射時には光源に近づくよう、回転及びスライド機構のついた基板ホルダーを設計、取り付けた。シリコン基板のRCA洗浄後、化学的に作製される酸化膜を残し、蒸着装置に入れ、紫外光を照射したところ酸化膜が除去され、シリコンの清浄表面が得られることを確認した。清浄表面には、シリコン原子の未結合手が存在するので、酸化膜堆積前に未結合手を水素原子で終端化することを試み、フォーミングガス中で紫外光を照射した。若干の終端化は見られるもののフォーミングガスに含まれる水素量が少ないために、界面準位密度の大きな低減にはいたらなかった。今後は、酸素雰囲気中で光照射し、未結合手の終端化を検討する。 電気測定では、高周波C-Vとquasi-static C-Vの比較が界面準位密度を測定するには最も正確ではあるが、quasi-static C-V測定には高い絶縁性が要求されるため、低温で作製した酸化膜には必ずしも適さない。そこで、今年度は、パルス発生器、高速応答容量メーター、ソースメーター、オシロスコープを購入し、パルス電圧に対する容量変化を測定するシステムを開発し、その容量変化から界面準位密度を求める方法を確立した。C-t法はquasi-static C-V測定ができない場合、界面準位、固定電荷、膜中の電荷すべてに影響されるTerman法による測定よりは、より正確に界面準位密度を求めることが可能である。
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