研究概要 |
1. 新規ペロブスカイトPbTi_<1-x>Fe_xO_3の作製と物性評価 錯体重合法を用いて重合条件、焼結温度、時間、雰囲気ガスを精査し単相試料の得られる条件を明らかにした。その結果、X線回折からは、x=0.3以上ではPb六方晶フェライトの顕著な生成が観測された。これはFe^<3+>が安定なため、ペロブスカイト構造のB位置には完全には入らなかったことによる。また六方晶フェライトの生成を反映してx増加と共に、磁化が増大し大きな保磁力を持つ磁化曲線が観測された。これらの結果は同一物質に対する既報告が誤りであることを示唆している。 2. Pb_<1-x/2>Ce_<x/2>Ti_<1-x>Fe_xO_3の作製と物性評価 ペロブスカイト構造にFe^<3+>を取り込むため、電荷補償用にPb^<2+>をCe^<4+>で置換した試料を作製し、異相の生成と物性を評価した。その結果、xの増加と共に結晶対称性が変化し、x=0.2以上では正方晶から斜方晶に変化しx=0.3までは六方晶フェライトの生成が抑制されることが明らかとなった。強誘電キュリー温度はPbTiO_3の490℃からx=0.3の100℃まで低下するが、x=0.3では大きな分極ヒステリシスが観測された。一方、x=0.2,0.3の試料は室温で強磁性を示す磁化曲線を持ち、そのキュリー温度も230℃以上の高い値を示した。これによりこの物質が室温強磁性・強誘電性を有することが初めて明らかとなった。 3. 新規層状構造物質Ba_<12>Fe_<28>Ti_<15>O_<84>の作製と物性評価 新規強磁性強誘電性共存物質として期待されるBa_<12>Fe_<28>Ti_<15>O_<84>の意図的な欠陥生成やイオン置換に対する結晶学的安定性を評価した。その結果、Fe位置での欠損は結晶を安定化し懸念される六方晶フェライトの生成を抑制できると共に電気抵抗率を増大させることが明らかとなった。これらは強誘電性発現のためのイオン置換に対する情報を与えるものである。
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