研究概要 |
1.新規層状物質Bi_<m+1>Fe_<m-3>Ti_3O_<3m+3>の薄膜合成と磁性・誘電性共存状態の探査 強誘電性と強磁性の共存の可能性を持つ新たな物質群としてBi層状物質を取り上げ、その一つであるBi_9Ti_3Fe_5O_<27>の薄膜を化学溶液堆積法およびスパッタ法により作製し、その作製条件と基本的磁気特性を明らかにした。その結果、スパッタ法ではSrTiO_3(100),(110)基板上に400℃以上でエピタキシャル成長すること、化学溶液法によっても硝酸塩を用いた溶液を用いてエピタキシャル膜が得られることを見出した。また、m=10の多量のFeを含む膜のエピタキシャル成長にも初めて成功し、メスバウアー測定により室温以上に反強磁性磁気秩序を持つことを見出した。このことは、室温強誘電性・反強誘電性共存材料を合成できたことを示す重要な結果である。 2.新たな強磁性・圧電性共存物質Ga_<2-x>Fe_xO_3の薄膜合成と磁性・圧電性共存状態の探査 室温で強磁性と圧電性の共存が期待される酸化物Ga_<2-x>Fe_xO_3の薄膜を初めて作製することを試み、薄膜の配向制御を含め、磁気的特性を明らかにした。その結果、キュリー温度の最も高いと予想されるx=0.8のエピタキシャル薄膜をSrTiO_3(100),(111)基板上にエピタキシャル成長させることに初めて成功した。(111)基板上の薄膜は膜の面内と垂直方向で大きな磁気的異方性を示すと予想されていたが、全く異方性を示さないという新たな知見が見出され、その原因として、エピタキシャル応力が関与しているものと推察した。このことは、この物質では格子歪が磁性に大きく関与することを示すもので、電界による磁性制御の可能性を示唆している。
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