研究課題/領域番号 |
20360144
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中村 有水 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (00381004)
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研究分担者 |
土屋 昌弘 独立行政法人情報通信研究機構, 上席研究員 (50183869)
中 良弘 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (30305007)
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キーワード | 発光素子 / 酸化物 / 希土類 / 赤外光 / シリコンフォトニクス / 集積回路 / 酸化珪素 / エルビウム |
研究概要 |
最近、集積回路は高速化が進み動作周波数は4GHzを超えている。さらなる処理能力向上を目指して集積回路内における信号伝送の一部を現行の電気配線から光導波路に換えるため、シリコン基板上における光伝送技術の開発が必要になっている。その実現のため、未熟な状況にある発光素子の開発が急務となっている。本研究においては、シリコン基板上に形成可能な薄膜材料、具体的には希土類の一種であるエルビウム(Er)を添加した酸化膜(SiOx)を発光層とする電流注入型発光素子の試作とその原理検証を行う。今年度(平成21年度)は、電流注入型発光素子の作製・評価と発光メカニズムの検討を行い、また光励起発光における内部量子効率の測定を行い、以下の研究成果を得た。 1. 電流注入型発光素子の作製・評価と発光メカニズムの検討 電流注入型発光素子を実現するため、電流注入用のN型及びP型ワイドギャップ層でEr添加SiOxを挟んだ3層構造を作製することが必要であるが、昨年度(平成20年度)は、N型ワイドギャップ材料として酸化スズ(SnO_2)を、P型ワイドギャップ材料として窒化ガリウム(GaN)を用いた。その結果、電流注入により、波長1.5μmでのErからの赤外発光を観測することができた。しかるに、現状では直接遷移型であるGaNを用いているため、Erからの赤外発光と共に、GaNからの紫外発光も観測されており、その紫外発光により励起されたフォトルミネッセンス成分も含まれる可能性がある。そこで今年度(平成21年度)は、この発光メカニズムに関して検討を行った。その結果、発光層であるEr添加SiOxの膜厚と電流注入による発光強度との関係において、膜厚の薄い領域で発光強度が顕著に増加しており、少なくともその領域では高電界による衝突励起に基づいた発光、すなわち電流注入による発光成分が支配的である可能性が示唆された。 2. 光励起発光における内部量子効率の測定 今後、電流注入型発光素子の性能向上を進めた際、量子効率がどこまで増加するかを見積もるため、光励起発光における内部量子効率の測定を行った。これは、発光フォトン数/吸収フォトン数で定義され、測定を行った結果、アニール温度やEr添加量に依存することが分かり、また最大で2%の量子効率であることが判明した。これは、発光素子を形成する際、まだ発光層の改善の必要性が示唆される値である。そこで今後、量子効率を下げている要因を調べる必要がある。例えば、発光層と電流注入層の界面や、発光層内部におけるアモルファス構造に起因した欠陥準位などにおけるキャリアの失活が考えられ、これらを明らかにすることで量子効率の向上が期待される。
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