研究概要 |
C_<60>飽和トルエン(10ml)にヨウ素(0.38g)を超音波分散した溶液に、IPA(20ml)をゆっくり注ぎ層状の溶液を作成した。この溶液を1週間冷蔵庫(7℃)に保管した。溶液を濾過しC_<60>結晶体を取り出した。結晶体をアンビルに詰め、600MPa~7GPa程度の高圧力をかけながらレーザーを照射した。 光源には自由電子レーザー(FEL)、パラメトリックX線(PXR)、YAGレーザーを用いた。それぞれの特徴を示す。FELは発振波長に原子・分子のエネルギー順位を利用しないために、波長を連続的に選択できる。しかしFELはレーザー強度が弱いという欠点を持つ。対してYAGレーザーの波長は使用した分子のエネルギー準位に依存した基本波と2,3,4倍波しか照射できないが、強度の高いレーザーを照射することができる。PXRは物質を透過するために、透過性の高いアンビルを用いれば、密封した状態でも試料にエネルギーを加えることができる。 ヨウ素を混入して結晶化させ、アンビルで圧縮(600MPa,30min)した試料のラマンスペクトルを解析した。ヨウ素ドープし結晶化した時、C_<60>の1469cm^<-1>ピークとともに、1456cm^<-1>のピークが確認された。1469cm^<-1>のピークはC_<60>分子のAg(2)振動モードと呼ばれるピークである。Ag(2)振動モードは、C_<60>の各炭素原子の五員環が中心に向かうように振動するモードで、ポリマー化によるsp^3的結合が起こると振動が制限されるため低ピーク側へのピークシフトが起こることが知られている。今回、ヨウ素ドープにより比較的大きな(13cm^<-1>)ピークシフトが観察され、ポリマー化反応が促進できることが分かった。
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