研究課題
本年度は、低いオン抵抗を実現する事を目的として、MIS構造を有するダイオードを作製した。高濃度ホウ素ドープダイヤモンド単結晶を基板として、その上に単結晶薄膜をホモエピタキシャル成長させた、積層構造となっている。ホモエピタキシャル層の発光分光評価から、この層中のホウ素の混入量は1ppb以下のI(真性半導体)層である事が分かった。この積層構造上に、申請者が開発した真空紫外線/オゾン処理を施し、金を電極として蒸着する事で、MIS構造を持っ低損失・高耐圧ダイヤモンドダイオードを作製した。ダイヤモンドMISダイオードの容量は電圧に依存せずに一定であり、I層が形成されているという発光分光評価と符合した結果が得られた。またこの容量値から、ノンドープ層の厚みは2μmと見積もられた。続いて、電流-電圧特性を評価したところ、5Vで100A/cm^2以上の高い順方向電流密度を達成した。これは微分抵抗率15mΩ-cm^2に対応し、通常のショットキー型に比べて2桁程度小さく、実用レベルに近い値であることを意味している。また、高温(740K、450℃)に30分間保持した後、室温で評価した結果では、昇温前と比べて大きな劣化が見られなかった。低濃度ホウ素ドープダイヤモンド上に直接金属を堆積させたショットキーダイオードでは、申請者らは500K以上の温度で特性が変化する事、またこれが界面でのダイヤモンド終端構造の変化による事を、昨年度の研究から明らかにしている。今回のMIS型ダイオードの結果は、金属との界面を形成するダイヤモンドのドーピング濃度が、熱的耐性の重要なパラメータである事が示唆しており、適切な制御により更なる高温安定性を得られると考えている。逆方向特性については、100Vまでは逆方向電流は検出限界以下であったが、それ以上の電圧領域で急増した。これは、電極端部での電界集中が原因として考えられ、次年度に実施する極薄酸化膜の形成により、逆方向電流の抑制を実施する。
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