研究概要 |
本研究は、シリコンCMOSプロセスを用いたメタマテリアルを導入することにより高利得なオンチップアンテナを実現するとともに、CMOS回路とメタマテリアルを融合した新たなアンテナ素子を提案する。本年度得られた研究成果は以下の通りである。(1)シリコン基板上のポリシリコン・SiN(50nm)-Al層で形成した人工誘電体層のさらに上層にアンテナを配置する構造について、より詳細な実験を行った。その結果、人工誘電体の誘電率実測値は22,000で、設計値の26,000と良く一致した。アンテナ間伝搬損失の距離依存性の実測から、人工誘電体上のアンテナは低抵抗シリコン基板上のアンテナより3dBだけ高利得であることがわかった。電磁界解析により、改善効果がすくない理由はポリシリコンの抵抗にあることを明らかにした。ポリシリコン抵抗を低減し、SiN膜を25nmに薄層化することにより、低抵抗シリコン基板上のアンテナと比較して15dB程度の高利得化が可能であり、10GHz近傍で-5dBiの利得を実現できることを解析により示した。アンテナ指向性については、実験と計算は比較的良く一致したが、高周波側で等方性からずれるという広帯域化における課題も明らかになった。(2)アンテナと増幅器をシリコン基板上に集積化する際に有利となるインダクタ不要な低雑音増幅器を設計し、0.18μmCMOSにより8GHzの広帯域特性を期待できることを明らかにした。(3)アンテナ放射領域を制御するために、メタマテリアルの考え方に基づく電磁波シールド構造を考案した。これは導電性材料の表面にグレーティング構造を形成することにより表面プラズモンを誘起させ、材料の損失により電磁エネルギーを吸収するものである。実験と計算は良く一致し、その可能性を示した。
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